第57話
楯並めて 伊那瑳(いなさ)の山の 木の間ゆも い行きまもらひ 戦えば 我はや飢ぬ 嶋つ鳥 鵜飼が徒 今助け来ね
現代語に直すと~楯を並べて伊那佐の山の木の間を通って行きながら、敵の様子を見守って戦ったので、我々は腹がへった。鵜養部の者どもよ、今すぐ助けに来てくれ。
この歌の意味がさっぱり分からないと、多くの研究者は悩んでいます。
解説してみましょう。
伊那佐の山は、奈良県宇陀市榛原自明にあります。宇陀は神武天皇が水銀を求めて兄ウカジ(エウカジ)・弟ウカジ(オトウカジ)と戦った場所です。神武天皇は、熊野から吉野に入り、そこの住民と争います。伊那佐の山が見える地点です。
そこにもともと住んでいる民は井光、石押分、ニエモツ(贄持)と記紀に書かれています。ニエモツは、魚を取って暮らしていました。部族はアタと呼ばれていました。以前このブログにも出て来たあのアタです。この辺りで水銀が取れること分かり、俄然、騒がしくなってしまいました。井光、石押分は水銀を採掘していた時の部族の名前でしょう。
神武はオトウカジを味方につけエウカシを殺してしまいます。
上記の久米歌は、その時の歌でしょう。アタ族は、神武(スサノオ)に水銀の採掘権を奪い取られ、元の漁師に戻ったのです。吉野川では鵜飼によって魚を取っていました。
激しく戦った相手が、鵜飼になってしまい魚を献上する立場になった相手を神武の兵(久米の兵たち)は、からかって、「腹が減ったぞ、食いもの(鵜飼でとった魚)をもって来いと言っているのです。井光からニエモツ(贄持)になってしまった部族をあざけったのです。
その後、ここの水銀採掘の権利は、神武の息子のタギシ耳に移り、そのタギシ耳から採掘権を奪い取ったというのが大彦(綏靖天皇)です。このプログで何回も書いたタケハニヤスの乱です。
伊那佐の山で気になるものを見つけました。春日宮天皇后陵です。ひょっとして大彦に切られたとされるアタ姫(ハニヤス姫:タケハニヤスからの連想で付けた名前)の陵墓ではないかと思い調べて見ると紀橡姫(きのとちひめ)吉隠陵で、紀橡姫は光仁天皇の母で、志貴皇子(しきのみこ)(追尊して御春日宮天皇という)の妃、和銅2年(709)吉隠の地で崩ぜられ、ここに葬られたと伝えられています。
しかし、ここは山の中腹です。こんなところに天皇の妃(アタ姫も天皇の后ですが、)陵墓を作るものでしょうか? アタ姫(山中で切られたあります)の墓なら納得ですが、言い伝えが書き換えられたのではと思ってしまいます。
※このプログは、御牧国(ミマキ国)が邪馬台国であるという前提の上で書いています。
今までのところ矛盾なくここまて書き続けています。ミマキ国は、茨木、高槻、枚方、交野です。
※これまでの記事はこちらです。
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:タケハニヤスの乱最終章